テーマはタイトル通り「 Scarce Scarcity/Abundant Abundance 」――“希少の希少化”と“過剰の過剰化”。
- バークのお家芸「Connections」流の語りで、 技術の偶然連鎖 が社会制度を組み替えてきた話から入る(印刷術→識字→宗教改革/蒸気→工場→都市など)。
- 今回の軸は、 希少性が解ける領域 と、逆に 過剰化(abundance)が制御不能に近づく領域 が同時進行していること。
- 製造の脱集中化 :3Dプリンタ/CNC/オープン設計(RepRap系)が “ものづくりの最小公倍数” を引き下げる。小ロット・短サプライチェーン化で“モノ不足”の一部が解ける。
- 情報の複製コスト≈ゼロ :知識・設計図・学習教材の デジタル分身 が無限コピーを許し、 教育やノウハウの希少性 が崩れる。
- バイオの民主化 :合成生物/DIYbioの話題に触れつつ、 遺伝子編集・小型化した計測 で研究のスケールが下がる= 実験機会の希少性 が下がる。
- エネルギーの“単位面積あたり”豊穣化 (将来予測):再エネ・蓄電の指数カーブを挙げ、 地域ごとに“足りない”の定義が変わる 未来像。
→ まとめ: 「希少性」は物理的制約だけでなく、制度・知財・流通が作る 。技術が境界を崩すと、「希少だったこと自体」が希少になっていく= scarce scarcity 。
- 情報洪水と注意の希少化 :コンテンツは無尽蔵、 希少なのは“注意” 。アルゴリズム・メディア・広告が 注意の市場 を形成し、 誤情報・陰謀論 も“増殖”。
- 選択肢過多のコスト :購買/学習/政治参加で「 意思決定疲労 」。 権威/レコメンド/コミュニティ規範 が“フィルタ”として再評価されるが、 閉鎖性 も生む。
- ネットワーク依存と脆さ :JIT(在庫極小)やグローバル部品網は効率的だが ショックに脆弱 。 冗長性の希少化 が新たなリスクを産む。
→ まとめ: 過剰の副作用 (ノイズ、飽和、依存、脆弱性)を 制度設計とリテラシー で捌けるかが勝負= abundant abundance 。
- 価格=希少性の影 が薄まる領域では、 独占の源泉が“アクセス制御(ゲート)” へ移る(プラットフォーム、IP、規格)。
- 教育・資格 :知識の希少性が崩れると、 評価・認証・信用の設計 が価値の中心へ。
- 都市と仕事 :製造が 分散・小規模化 すると、 “どこでも働ける/作れる” 一方で、 品質保証と安全基準 が新しい公共財に。
- 来るのは “ポスト希少”と“過剰の統治”が同時に問われる時代 。鍵は 相互運用性・オープン性・冗長性・分散 と、 人の注意・判断 を守る制度。
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してきた :
- 知識・学習 :MOOC/公開講義/オープン論文。 学ぶ権利の拡張 は現実に。
- プロトタイピング :デスクトップ製造・ 金属AM(航空宇宙・医療) の量産域進出。
- ソフトウェア知能 :生成AIで 設計・コード・資料作成の初期コスト が大幅低下。
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してない/新希少 :
- 信頼/検証 : “正しさ”の鑑別コスト が爆増(AIも相まって)。
- 材料・資源 :レアアース・半導体用資材・水・廃棄物処理能力など 地政学的希少 。
- 冗長性 :パンデミック・戦争・極端気象で痛感。 余白(在庫・代替経路) は“高級品”。
- 情報過剰×生成AI :テキストも画像も “生成し放題” に。 フェイクの摩擦係数が最低 になり、「 真偽鑑別スキル/仕組み 」が決定的資産に。
- 注意の市場 :短尺動画/通知設計が 注意を分解 。個人で戦うより、 UI設定・制度(既定オフ、クワイエットモード義務化等) が効く段階へ。
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オープンと互換性
- 相互運用性・標準化・ポータビリティ で“ゲートによる人工的希少”を抑える。
- 例: オープン部品表(BOM) ・ データの可搬性 ・ RISC-V/OSS 等の公共基盤。
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品質・安全・検証
- 「誰でも作れる」世界の副作用を抑える ラベル・監査・トレーサビリティ 。
- モデル・設計の 由来(provenance) と 検証手順 を“同梱”する文化へ。
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冗長性を積む
- 在庫ゼロ至上主義の卒業 。 地域分散(ローカル×グローバルの二層化) 。
- 代替経路・代替材料 の“練習”を年次で回す(レジリエンスは筋トレ)。
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注意の保護
- 既定オフ/ 静穏デフォルト のUI、 “操業停止ボタン” (全通知遮断)の標準装備。
- 学校・職場の“注意衛生” (会議・チャット・試験のデジタル衛生基準)。
- “希少→過剰”の転換を見抜く :自分の分野で、いま価値のコアは 作る力 か 選ぶ・検証する力 か。後者なら メタスキル(情報鑑別、評価指標の設計、プロトコル運用) を最優先で鍛える。
- “余白”を設計に入れる :JIT運用でも “例外手順” (事故時の在庫・連絡網・代替ソース)を明文化。
- “人工的希少”に警戒 : 囲い込み(データ持ち出し不可、独自規格縛り) を契約前にチェック。 離脱のコスト を先に見積もる。
バークの読みは当たり。「 希少の希少化 」と「 過剰の過剰化 」はもう来てる。 価値の中心は “作る”から“見分ける・つなぐ・守る” へ。 そのための オープン/検証/冗長/注意衛生 が、次の“公共”になる。